多言語化の品質基準とプロセス
多言語化のガイドラインで整理したInternationalization(i18n)・Localization(l10n)の考え方をもとに、多言語化で達成する品質基準(標準品質・理想品質)と、それを達成するためのプロセスを説明します。
品質基準
多言語化は、アクセシビリティの品質基準とプロセスで扱う操作・知覚に関する基準とあわせて、情報が理解できることの品質を高める取り組みです。その品質を「標準品質」と「理想品質」に分けて考えます。
なぜ多言語対応に取り組むのか、その背景やデータは多言語対応が必要な理由を参照してください。
標準品質
標準品質とは、従業員ユーザーが操作する画面で、Internationalization・Localizationの各原則に沿って設計・実装・文言調整がなされ、次をすべて満たす状態です。
- ユーザーがSmartHR上の情報を自分が得意とする言語で理解できる
- 管理者や人事担当者から個別に翻訳・説明が頻繁になくても、自分で手続きを進められる
- 実際の書類、会社からの案内、行政情報と照合できる
また、プロセス上の標準品質を以下の通り定義しています。
- 日本語の文字列のリリース後、2週間以内に翻訳が整備されている
標準品質の対象をまず従業員ユーザーの画面に置くのは、従業員が自分の生活や雇用に関わる手続きを自分で進める必要がある一方、管理者・人事担当者と比べて社内での個別サポートを受けにくいためです。管理者・人事担当者が操作する画面は利用文脈が異なるため、まずは従業員ユーザーの画面を標準品質の優先対象とし、理想品質で対象範囲の拡張を検討します。
理想品質
標準品質を満たしたうえで、ガイドラインに列挙した対応にとどまらず、利用シーンに応じた使いやすさを追求する状態を理想品質とします。たとえば、次のような改善が含まれます。
- 手続きの背景や補足説明を、対象言語で提供する
- 多言語対応の範囲を、管理者・人事担当者が操作する画面まで広げる
- 管理者が個別に翻訳・説明しなくても運用できるよう、運用負荷を下げる
- やさしい日本語と多言語対応を組み合わせ、日本語で読む利用者にも伝わりやすくする
また、プロセス上の理想品質は以下が含まれています。
- 日本語の文字列と同時に、全言語の翻訳がリリースされている
- 個別の翻訳だけではなく、アプリ全体の使用性を確認するためのLocalization Quality Assurance(LQA)が導入されている
品質を達成するプロセス
標準品質は、Internationalization(設計・実装)→ Localization(翻訳) の流れで達成します。各段階の具体的な観点はそれぞれのガイドラインに従い、ここでは全体の流れと役割を示します。どの段階でも、単語単位ではなく画面全体の意味が他言語でも保たれることを意識します。
1. Internationalization:設計・実装
多言語表示を前提にUIを設計し、文言を実装する段階です。翻訳がまだなくても破綻しない土台をつくります。詳細はInternationalization (i18n)(デザイン編・実装編)を参照してください。
- プロダクトデザイナー: 語順や文字量の変化に耐えるレイアウトと、言語に依存しない操作の流れを設計します。
- プロダクトエンジニア: ロケール、日付・数値、複数形、文字列結合の避け方などのi18n要件に沿って実装します。コンポーネントやLintなど開発基盤のルールに従い、翻訳キーや属性(
langなど)を正しく扱います。
リリースブロッカーの考え方:Internationalizationが整っていれば、ローカライズ(翻訳)が未完了でもリリースできます。(翻訳がまだない言語では、フォールバックにより日本語が表示され、それを許容します)
2. Localization:翻訳
Internationalizationで外部化された文言を、Localizationの原則に沿って翻訳・調整する段階です。詳細はLocalization (l10n)を参照してください。
翻訳は、翻訳管理システム(TMS)を通じて行ないます。
- 週のはじめに、TMSが翻訳辞書の変更を自動で検知します
- その週のうちに翻訳し、週の終わりごろに翻訳をリリースします
このため、基本的には個別に翻訳を依頼する必要はなく、リリースから通常1〜2週間で翻訳が追いつきます(このタイムラグを縮める取り組みは進行中です)。
ただし、翻訳辞書ファイルの場所(パス)を変更する場合は、事前にInternationalizationへ共有してください。 検知の対象が変わり、共有がないと翻訳が反映されない可能性があります。
3. リリース後の確認
- i18nユニット: 言語を選択し、不具合やわかりにくさをチケット化します。
- 文言・翻訳に関わる担当者: 用語集やスタイルに沿っているか、表記ゆれや文脈のずれがないかを確認します。制度改正や画面改修にあわせて翻訳資産を同期します。